山梨事業所「あきらめずにできることにチャレンジ」

山梨県笛吹市・H.Kさん(53歳)


Kさんの1日は、忙しい。ご主人のTさん(57)が仕事で不在の間のケアをするため、午前8時から午後6時まで切れ間なく看護や介護の方々が来るからです。障害者支援費制度や介護保険などを活用した、この素晴らしいケアプランは、Kさんご本人がケアマネージャーさんと協力してマネジメントしています。「残存機能を維持し、普通の生活ができるためのケアサービスを考えている」というKさん。ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症して18年目になります。

左手にだるさを感じ始めたのが昭和63年。翌年、ALSと診断されました。告知は当初、ご主人だけにされましたが、保健師として働いていたKさんは、徐々にご自身の病気に気づいていきました。だんだん動かなくなる手足。不安の中、Kさんは強靭な精神力で残存機能維持に努めてきました。
平成14年に人工呼吸器を装着するまでの10年間、週3回の通院リハビリは欠かしませんでした。週1回と回数は減ったものの、今でも通院リハを続けています。おかげで介助者1人の支えで立てるくらい、足の力は衰えていないそうです。

日本ALS協会山梨県支部長を務めるKさんは、車いすに人工呼吸器を載せ、県内外の患者さんを訪ねたり、看護学生への講演を行ったりと、積極的に外出します。コミュニケーションは、文字盤(50音や数字などを書いた透明アクリル盤を介助者が1文字ずつ指差し、まばたきの合図で文章を伝えます)やパソコンを駆使。「他の人の療養生活を知ると参考になるし、励みにもなる。また、季節の風景に触れられて感動する」。Kさんの活動範囲はますます広がります。

車いすに座ったご婦人と支えるご老人
「これだけのことができるのは、本人が意思をきちんと伝えているから。普通では体験できないことを体験させてもらって、女房には感謝しています。一生の生きがいをもらった」と話すTさん。Kさんの病気がなければ出逢わなかっただろう人たちとの交流や、看護・介護の知識が増えていくことが、今はとても楽しみだと言います。現在は、県内の難病患者さんの療養生活全般を支える拠点となる山梨県難病相談支援センターの開設に向け、奔走しています。

「よく呼吸器を着けると24時間介護になり、家族に迷惑をかけるからと呼吸器装着を迷う患者さんがいますが、とにかくやってみないと分からない。工夫すればできないことはないんです」とTさんは言い切ります。Kさんも「まずできることに挑戦してみましょう。自分の世界が広がるかも…」と話します。「できないこと」ではなく、「できること」を考える。そんなお二人の前向きな姿勢に、在宅ケアチームの一員としてとても励まされています。