山梨事業所「介護サービスに新しい風」

山梨県甲府市 ケアセンターなごみの取り組み


「今度、新しい形の介護サービスを始めたのだけど、ふれあいさんにマッサージに入ってもらえないかしら?」
 
 ケアセンターなごみの吉野久二子ケアマネから問い合わせがあったのは、昨年の4月でした。以前から在宅の患者様の紹介は大勢頂いておりましたが、耳慣れない「ホームシェアリング(小規模共存住宅)」でのサービス提供。打ち合わせを兼ねて見学に伺ったところ、そこは一見普通の民家でした。お邪魔すると、個々のお部屋に利用者様が生活されていました。皆様がスタッフによる介護を受けながら、集団で生活を送るというスタイルです。共同生活を送ることで家賃や食費等が低減され、負担額も特養並みに抑えられる仕組みです。
 ふれあいもさっそく手続きを行ない、お一人またお一人と受けていただける患者様が増え、現在は4名の施術者がマッサージに伺っております。
長屋のイラスト
 その中のお一人のIさんは、電気設計事務所を開業されておりましたが、平成19年に脳梗塞を発症。要介護状態となりました。老人保健施設に入所されましたが、平成22年にくも膜下出血を発症。リハビリ入院を経て、昨年の12月にこの住宅に入居され、それとほぼ同時期にマッサージをスタートしました。
 病院に入院中は全介助の状態で、ご家族はこれ以上良くはならないのかもと感じていたそうです。娘さんのMさんは「食べることが大好きだった父が病気のために食事制限となり、元気もなくなり、かなり痩せてしまいました。しかしこちらにお世話になってからは自分のペースで食事もとれるようになり、元気も回復しました。スタッフの方々のマンツーマンの手厚い介護サービスの成果が表れ、一時減ってしまった体重も戻りつつあります。母も周囲に気を使うことなく、毎日のように父のもとに通うことができるので元気を取り戻しました」と笑顔で話されます。入居した当初は、正直言ってかなり不安もあったそうですが、今では不安もなくなりました。マッサージの成果も徐々に現れ始め、座位保持が楽になってきたとのこと。「これからも期待しています」との言葉をいただきました。
ベッドのなかのおじいさんと看護師さん
 吉野ケアマネがこの事業を始めたきっかけは、まず第一に介護資源の不足感でした。病院から退院される患者様の状態(胃ろう等)によっては、ベッド数の制限やマンパワーの不足の問題等があり、受け入れてくれる施設がない。特養の長期の待機や、他の施設の入所が決まったとしても経済的な負担が大きく、将来的に不安があるとの声…。
 もう一つは、利用者様本人の本音です。「施設には入りたくないけど、住み慣れた家がいいけど、家族のことを考えると仕方ないよ」。また、家族の「介護はしたいけれど、現実的には無理。ならばせめて良い環境の中で残された生活を送ってほしい」との思いもありました。
 医師からの意見にも背中を押されました。長期施設待機の生活、ロングショート利用による廃用の問題です。現実充分にケアできない実態もあるので仕方ないとの考え方もあるが、徐々に低下してしまうADLを目の当たりにして何とかできないものか…。こんな声を何度も聞くうちに、「今、私に何かできることがあるのではないか、始める時期が来たのではないか!」と思ったのだそうです。
困った顔の老夫婦
 もちろん簡単にこのサービスを始められたわけではありません。例えば住宅の確保。良い物件が見つかっても、道が狭くて救急車が入れなかったり、理解不足による近隣の反対があって借りられなかったことも何度かありました。幸い理解のある大家さんの多大な協力でスタートすることができましたが、地域コミュニティーが支えてくれないと成り立たない事業でもあるのです。
 それ以外にも多くの方々の協力があり、現在の体制が出来上がりました。先日も入居者様とそのご家族、スタッフを交えてファミリーレストランでの食事会が開かれました。既存の施設では困難と思われる、季節感を感じる新しい試みも計画中だそうです。
 
 吉野さんは「これからもさまざまな課題が出てくる事は承知しています。客観的な満足度を充実させるため、サービスの見直しも必要と感じています。我田引水になりがちなことも踏まえて、入居の際にはスタッフとご本人、ご家族と主治医との十分な話し合いが持たれます。避けては通れない最期の時の考え方まで話し合います。地域医療、地域コミュニティーとの連携を充実させ、『ついのすみか』として、さまざまな介護スタイルの一つの選択肢として、この事業を展開させていきたいのです」と熱く語ります。
私たちふれあいも、吉野さんのこの思いにこたえられるよう努力し、チームの一員としてこれからも参加させていただければと願います。
高齢者と家族