高知事業所「口で筆をとる画家」

高知県高知市 N・Uさん(71歳、頚椎損傷)


 誰だって、自分自身が…と思っていると思います。Uさんもそのお一人です。
会社勤めでバリバリ仕事をしていた時期。仕事終わりの食事会、自転車で帰途につき、もうすぐで家に着くという所で、ライトが少し右に曲がっているのが気になり、右足で蹴ったところ、ライトがスポークに食い込み、頭から転倒。
 救急車で搬送され、首の骨が折れたらしいということは理解できたが、頚椎損傷などと言われても、治るものと思っていました。先生から「Uさんのこれからは、辛抱し、耐える人生」と告げられても、何の事やら分からなかったと言います。
 
 しかし、時間が経つにつれ、現実を突きつけられました。首は動く。しかし首から下は自分の意志では全く動かない。かすかに動く左手。車いす生活の始まり。不安でいっぱいになり、夜も眠れない日もあったそうです。
 ご家族や周りの方の協力もあり、手や足が少しでも動くようにとリハビリにも精を出し、デイやショートなどの介護サービスを利用し始めました。ある施設で絵画・習字の教室があり、スタッフの方の勧めや、同じように障害を抱えてる方が絵を描いている姿を見て、自分も頑張ってみようと思いました。

 ところが、始めてはみたものの、手足がいうことをききません。手に筆を巻きつけてみたりもしましたが、肘が伸びないのでうまくいきませんでした。試行錯誤する中で、「口でくわえてみるのは?」と提案されたことが、今のスタイルのきっかけでした。

パレットと絵筆
アトリエには、壁一面に絵が飾られ、棚の中やファイルの中にも数えきれないくらいの作品がありました。スピリットアート展(県障害者美術展)でも5回入賞するほどの実力。小さな頃は絵が下手で苦手だったと、笑いながら一枚ずつ絵を紹介してくれました。集中すると5、6時間は経過してることもあるそうです。

 「口で筆をとるため、肩や首が大変疲れるけれど、マッサージを受けると疲れもとび、次の作品への威力が湧く。スタッフの方も親切丁寧。マッサージは無くてはならない」と言ってくださいます。
素敵な絵画・短歌・俳句作り、大好きなカラオケがこれからも笑顔でできるよう、私たちも全力で応援し頑張らせていただきます。