三重事業所「心と心をつなぐ」

 N様は熱中症が原因で低酸素脳症になり、遷延性意識障害との診断を受けられました。自発的な動作は困難で、YESの場合、左手を握ることでのみ気持ちを表されていました。
 ご家族様は四肢の拘縮緩和と身体機能改善を希望され、マッサージを継続していただいています。拘縮の進行はみられないものの、身体機能に大きな改善はみられていませんでした。

 転機は昨年6月に開催された、国学院大学人間開発学部教授の柴田保之先生の講演でした。柴田先生は手や指のアシストをして筆談での意思疎通を図る方法を考案され、その普及のため尽力されています。その講演に参加され、自律動作困難な方が先生にアシストされながら文字を書いていく姿を見ながら、お母さんは「えー、ほんとなの?」と正直半信半疑だったそうです。
 Nさんも先生にアシストされるとたしかに数字や文字を書かれました。お母さんも先生の指導を受け、Nさんの手の動きをアシストし、文字を書かれました。書いた文字は判別が難しい物でしたが、一文字ずつ先生と相談しながら読解していくと「つよいみかたができました」と読めました。文字が間違ってないかNさんに確認し、「誰のこと?」と聞くと、Nさんは「せんせい」と綴られました。筆談により十何年ぶりにNさんとの意思疎通ができた瞬間でした。

鉛筆を持つ手のイラスト

 それからNさんとご両親は積極的に筆談によりコミュ二ケーションを続けられています。今までは無理だった本人の思いがわかってあげられるようになったのが嬉しいとお母さんは言われます。
 今年は、なんと手書きでの年賀状を頂きました。

三重事業所 澤野 満